ヨーロッパから見た、モバイル市場の現在

お部屋の片付け第2弾。
2月にMobile World Congressという、スペインのバルセロナで開催された世界最大(らしい)の携帯電話関連の展示会に行ったとき、現地でもらった雑誌の切り抜きが出てきた。
一部、どの雑誌だか分からないという問題があるのだけど、ここに書いておく。海外の人の目線を借りると、同じ市場を見るにしてもぜんぜん違う感じがして面白い。

モバイルインターネットの利用状況

■米Novarra社の発表(出典:Mobile World Congress Daily 2008、2月14日号)(Noverraはウェブサイトをモバイル向けに自動変換するシステムなどを開発、提供している企業で、Vodafoneや香港の3などの通信事業者を顧客に持っている)

・利用者1人あたりの月間データ量は8〜20Mb(bってことはビットかな)。ただし、Novarraの技術はデータ量を10分の1程度に圧縮するので、実質的には1ヶ月あたり20〜200ページを見ている。
・動画ストリーミングは1ヶ月あたり3〜8回。平均で1回あたり7つの動画を見ている。
・モバイルでもロングテールは起きている。たとえば、アメリカ、ヨーロッパ、アジアのトラフィックを全て集めた場合、アクセスの多いサイト上位10件の合計アクセス数は、全体の25%に過ぎない。一番多いサイトでも全体の6%、2位は1%未満とのこと。
・モバイルでもっともアクセスが多いのはSNS。次が情報サイト、その次が検索。検索がトップと思われがちだが、実はそうでもない。

えーっと、1ヶ月あたり200ページって、1日7ページくらいですか。少ねぇっ。
イー・モバイルは以前、平均1.4GBという数字を出してましたね。まぁこれはPCの場合ですが。
モバイルでもロングテールが起きている、というのは、世界全体で見たらアクセスするサイトは分散するに決まってるので、根拠としては弱い。
モバイルでもっともアクセスが多いのがSNSっていうのは実感として納得。やはりケータイはコミュニケーションとの相性が良いですね。

進む3Gへの移行

■世界動向(出典:Mobile World Focus 2008)

・2007年、ついに2Gの普及率が減少に転じた
2006年7月〜2007年6月の状況を見ると、
NTTドコモFOMA契約者純増数は1164万人で、年間44%増。
ソフトバンクモバイルの場合は同550万人で、同148%増
AT&Tの場合は同475万人で、同1900%増

確かに、展示会でも3G〜3.9Gの出展が花盛りでした。HSDPA、HSUPA、LTEが先端技術ですが、中にはこんなのも。

・EDGE Evolution:下り最大1.9Mbps(実測1.2Mbps程度)
※EDGEの場合は下り最大473kbps

名言

■俳優、ロバート・レッドフォードの発言(出典:Mobile World Congress Daily 2008、2月14日号)

・「技術は、本当に魅力的なものにはならない。アーティストが、そこに魅力を吹き込まない限り」
・「アートが技術に手を貸すほど、勢いに拍車がかかるだろう。エンターテインメントは今まさに、新しい技術と一緒になろうとしている」

まぁ、使われてこそなんぼ、という意味で。ちなみに彼は、モバイルが「第4のスクリーン」になることを望んでいるようです。

新技術動向

・米Audience Voice Processor社が、ケータイの通話ノイズを軽減するプロセッサを開発。人間の音を聞くメカニズムを元に開発したとのこと。(プレスリリース
Google開発のケータイ向けOS「Android」をLinux Zaurusで動かした人がいる・・・ってぐぐったら結構有名な話らしい。ハッカーCortezさんのブログにまとまっている。しかし、リナックスザウルス、愛されてるなぁ。

注目企業

■ZTE(中国の通信機器ベンダー)(出典:Mobile Communications International)
海外の通信関連の展示会に行くと、やけに大きなブースを出しているイケイケ企業。特集されていたので概要を紹介。

・深圳(シンセン)で1985年に設立。創業当時はZhongxing Semiconductorという名称。
・深圳証券取引所に1997年に上場。
・ガートナーによれば、2007年上期にもっとも多くの携帯電話関連の契約を勝ち得た企業。
・2007年上期の売上高は、前年同期比43.9%増の21億ドル(約2100億円)、利益は同32.5%増の6億3700万ドル(約637億円)。
・最大の顧客はChina Mobile=契約者ベースで世界最大の通信会社
・主な顧客は発展途上国の通信事業者。価格勝負が出来るから。
WiMAXに力を入れており、GSMCDMAも使える端末を開発中。米Sprintなどに納入予定。
・社員は2万7000人。そのうち70%以上が大学卒以上。平均年齢は30歳。
・とはいえ、通信機器ベンダーとしては下位。業界最大手はエリクソンノキアシーメンス、2番手軍団がアルカテルルーセントモトローラHuawei

日本で言うなら、ドコモお抱えのNECや松下といったイメージでしょうか。
低価格製品から競争に入るという点では、「イノベーションのジレンマ」で勝ちあがれるか注目。

大変なの通信事業者さん

■Verison Wirelessさんの場合(出典:Mobile Communications International)

・コールセンターの顧客対応コストは1分あたり4〜6ドル、もしくは1通話あたり15〜20ドル

それどこのダイアルQ(ry

がんばる端末ベンダー

Nokiaさんの場合(出典:Mobile Communications International)

・2007年第4四半期のシェアが40%を超えた。これは2〜4位のサムスンモトローラソニーエリクソンのシェアを足したのよりも多い。

Linux開発ベンダーのTrolltechノルウェーを買収の噂
・ケータイとPCの両方で使えるウェブアプリケーションを第三者でも開発できるようにしたい。これってGoogleAndroidとかAppleOS XとかMicrosoftWindows Mobileとかとぶつかる動き

世界最大手の端末ベンダーNokiaと、最大手のPC OSベンダーMicrosoftと、最大手検索ベンダーGoogleと、イケイケ機器ベンダーAppleの激突や、いかに。

私の知らない世界のケータイ市場

■アフリカ市場(出典:Mobile World Focus 2008)

・契約者数は2007年6月末時点で2億3121万人、前年同月比45.02%増
・国として多い順は、南アフリカ、ナイジェリア、アルジェリア、エジプト、モロッコ。ただしナイジェリアがもうすぐ南アフリカを抜きそう
・アフリカのケータイ普及率はまだ25%。拡大普及余地は大きい。
・市場首位は南アフリカのMTN社。ボーダフォンが2位。

■中東市場(出典:Mobile World Focus 2008)

・契約者数は2007年6月末時点で1億4677万人、前年同月比30.25%増
・国として多い順はトルコ、サウジアラビア、イラン
・中東のケータイ普及率は49%
・市場首位は南アフリカのMTN社。ボーダフォンが2位。

■アジア市場(通信関連全体の動きとして)(出典:Telecom Asia 2008年1月号)

・China Telecomの主力事業の2007年売上高は前年比2.4%増の245億ドル。純利益は同1.9%増の36億ドル
・香港のPacNetが米国市場に上場を計画。8億ドルを調達したい考え。また、日本とインドで企業買収を検討中。
・韓国のKTが子会社のKTFの吸収合併を検討

■世界でもっとも加入者の純増が多い市場(出典:Mobile World Focus 2008に載ってたInforma Telecom & Mediaのデータ)

・2007年
インド(8120万人)、中国(7543万人)、パキスタン(2909万人)、インドネシア(2741万人)、米国(2138万人)、ロシア(1869万人)、ブラジル(1438万人)
・2008年
インド(8983万人)、中国(5608万人)、インドネシア(2453万人)、パキスタン(2386万人)、米国(1663万人)、ロシア(1256万人)、ブラジル(1168万人)

おそるべしインド&中国。